便秘について
便秘でお悩みの方は数百万人とも言われていますが、適切な治療を受けている方はとても少ないです。体質だからと誤解されている方が多いのですが、便秘は適切な治療で改善できる病気です。市販薬で悪化させてしまうケースも珍しくありませんし、便秘が慢性化すると腸や肛門への負担も大きく、さまざまな疾患の原因になり、全身の健康やクオリティ・オブ・ライフに大きくかかわってきます。命にかかわる重大な病気が便秘の原因になっている可能性もあります。便秘の原因やタイプに合わせた治療を行っており、じっくりお話をうかがって体質やライフスタイルなども考慮しながら治療方針を決めていきますので、便秘でお悩みがある場合にはお気軽にいらしてください。
受診をおすすめしたい方
- 便が硬い
- 排便しにくい
- かなりいきまないと便が出ない
- 便を出すまでに時間がかかる
- 便に血液が混じる
- お腹が張って苦しいことがしばしばある
- 3日以上排便がないことがよくある
- 毎日排便があっても、すっきりしない
- 残便感がある
- 服薬しないと便が出ない
- 服薬して下痢状態になるとやっと出る
- 手前の便だけ硬いので合う薬がない
- 便秘薬の量が増えた
- 便秘になると肌荒れする
- 下半身がむくみやすい
便秘とは
2017年末に日本消化器病学会関連研究会が発表した『慢性便秘症診療ガイドライン』で、便秘は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。何日以上排便がないといった頻度だけでなく、満足できる排便ができていない状態も便秘に含まれます。
便秘の原因
便秘を起こす原因にはさまざまなものがあります。便秘の症状が現れる病気は数多くありますし、腸の機能が低下しているケース、運動・水分・食物繊維の不足や腸内細菌叢の乱れ、ストレス、排便習慣の乱れなどによって起きているケースもあります。便秘を起こす病気の中には命にかかわるものもありますし、その場合には早急に適切な治療が必要になってきます。ありふれた症状だからと放置せず、受診して検査を受けましょう。
便秘の種類
便秘は大きく分けると、排便回数や量の不足により便が腸の中で滞ってしまうタイプと、量や回数に問題がなく快適な排便ができずに残便感があるタイプがあります。
また、原因になる病気があって便秘という症状を起こしている器質性便秘をはじめとする続発性便秘、腸の機能的な問題で便秘が起きている機能性便秘に分けることもできます。続発性便秘の場合には原因になっている疾患の治療を基本的に優先しながら便秘の症状を緩和させる治療を行う必要があります。
便秘薬には作用の異なるものがたくさんあり、便秘の種類や症状、ライフスタイルに合わせて処方することで効果が現れます。合わない薬の服用や生活習慣によって重症化しているケースが多いため、まずは受診してご自分の便秘のタイプや適切な改善方法を調べてもらってください。
機能性便秘(原発性便秘)
結腸通過時間正常型(直腸性便秘)
直腸まで正常な時間で便が到達していますが、便意の低下により便秘が起きています。
結腸通過時間遅延型(痙攣性便秘)
便が直腸に到達するまでに時間がかかっており、大腸の蠕動運動の乱れが原因で便秘が起きています。
便排出障害型(弛緩性便秘)
排便機能の低下などにより、いきんでもなかなか排便できない状態になっています。
続発性便秘
病気が原因となって便秘の症状が起きています。できるだけ早く適切な治療を開始しないと危険な病気の可能性もありますので、ご注意ください。
器質性便秘
がんなどの疾患による腸管閉塞や腹部の手術後に起こる癒着によって起こる便秘です。閉塞や狭窄を改善するために手術を行うこともあります。
肛門直腸疾患
切れ痔が重症化すると肛門狭窄が起こって排便が困難になり、便秘を起こします。排便時に激しい痛みが起こりますが、日帰り手術で解消できますのでできるだけ早めに受診してください。
その他
便秘は全身のさまざまな疾患によって起こりやすい症状のひとつです。また、薬の副作用として便秘の症状が現れるケースも珍しくありません。便秘を起こしやすくなる病気には、糖尿病や甲状腺機能低下症などの内分泌代謝疾患、神経疾患や筋疾患などがあります。副作用で便秘が起きやすいのは降圧剤や向神経薬などがあります。
便秘の診察と検査
当院では受付で疾患名や症状などについてお聞きすることはありません。また、診療室は完全個室で外に話し声が聞こえることはありません。プライバシーに関して十分に配慮していますので、安心してご相談にいらしてください。
診察
便秘の状況、排便に関するお悩み、既往症や服用している薬、生活習慣などについてくわしくうかがい、触診や検査を行います。
便秘を起こしている疾患の有無、原因や便秘のタイプなどの状態をわかりやすくご説明し、ライフスタイルを考慮しながら治療内容をご相談して決めていきます。
検査
状態を把握するために、腹部の聴診と触診、腹部X線検査を行います。血液検査や大腸内視鏡検査が必要になるケースもあります。
大腸内視鏡検査
内視鏡で大腸の粘膜を直接観察する検査で、大腸の長さや狭窄の有無などを確かめることができます。大腸がんや大腸ポリープによる狭窄があった場合には、その場で組織を採取して確定診断もできます。
治療法
生活習慣改善
食習慣をはじめとした生活習慣やライフスタイルをうかがって、具体的な改善方法をご提案しています。便秘解消のための生活習慣改善は、便秘のタイプによって変わってきます。たとえば食物繊維の摂取は過剰に行うとかえって逆効果になる場合がありますし、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維といった違いを考慮する必要が出てくるケースもあります。患者様に合わせた効果の高い方法をしっかりお伝えしますので、無理なく行えるものから取り入れていきましょう。
薬物療法
さまざまな作用のある多数の薬剤がありますし、最近新しい作用を持つ便秘薬も次々に登場しています。薬剤には下剤、腸の機能を整える薬剤、腸内フローラを改善するものなどがあり、漢方薬も選べます。継続使用が可能なものもありますが、一時的な使用に限って有効なものもあります。当院では、便秘のタイプ、状態やお困りの症状、年齢、ライフスタイルなどを考慮し、相談しながら最適な処方を行っています。なお、便秘薬の効果には個人差がありますので、毎回の診療時に薬剤の量や種類を微調整していき、最適な薬剤の組み合わせと服薬量を見つけていく必要があります。